CTO 1年目を振り返って

Cloudbase の CTO になってもうすぐ1年なので、何がどう変わったのかを書いてみようと思います。これから CTO を目指す人の参考になったら嬉しいです。

入社の経緯

元々、Cloudbase の代表である岩佐とは友人で、Cloudbase はかなり伸ばせそうだからそろそろ一緒にやろうよ、とは1年以上前から誘ってくれていました。

そんな中、今年の1月ごろに前職で体制変更などが相まって社内異動が決定しました。その経営判断自体に不満はなく納得していました。とはいえ、いずれにせよ新しいことをやるのであれば、よりやりたいと思っていた Cloudbase をやろう、と思い CTO として入社することを決意しました。

当時はまだリリース前であったため英断だったのですが、自分が絶対に伸ばせると確信したところにリスクを取れて本当によかったと思っています。

CTO になってからの時間の使い方の変化

当初は CTO とはいえ、そんなにエンジニアの数がいなかったので、半分以上の時間でコードを書いたり AWS などのクラウドのセキュリティについて調べたりと、プロダクトにほとんどの時間を使っていました。残りの時間は営業に同席したり、導入支援をしたりと CS に近しいことをやっていました。

その後、人が増えるにつれてコードを書く時間が減り、より長期のプロダクトについて考えたり、リサーチしたりする時間が増えました。より経営的な面も求められるようになり、経営メンバーで事業計画とプロダクトの方針と営業の方針を照らし合わせて議論する時間も増えました。並行してお客様との対話やサポート・ヒアリングも多く担当しプロダクトへのフィードバックも行いました。

この1年で得たもの

セキュリティに関する知見

前職で高いセキュリティ要件を求められたこともあり、Cloudbase に入った時点でクラウドセキュリティへの知見は十分あったと自負していますが、とはいえそこからさらに学ぶことが多かった1年でした。

特に、前職時代は現場のエンジニアとしてセキュリティと向き合っていたので、Cloudbase を作っていく中でガバナンスをする側がどういうことを課題に感じているのか、どういったバックグラウンドの人が担当されていることが多いのか、ということの解像度が一気に上がりました。

また、自社でのセキュリティやガバナンスにも力を入れており、情報の取り扱いや社内での権限管理、クラウドの安全な運用を担当者目線でも深めることができた1年でした。

SaaS・スタートアップ経営

これに関しては全くの未経験でしたが、社内で教えてもらったり投資家から教えてもらったり、自分で本を読んで勉強することでかなり吸収することができました。日本でスタートアップのエコシステムが発展してきていることに感謝しております。

詳細は割愛しますが、SaaS 面だと、どういった非機能要件が大企業に求められ、どういう指標を追うべきで、マルチプルはどれぐらいになるのか、といったことを学びました。経営面では、調達時に使われる株式の種類や VC が調達時に求めること、組織を作っていくということ、採用、などなどありとあらゆることを学んだ1年でした。

投資家の皆様とのつながり

シード時からお世話になっている DNX、Arena (海外機関投資家)のみなさんには本当に多くのことを教えていただきました。DNX のみなさんとは定例を隔週でやってもらっていて、プロダクトの話からセールスの話、経営の話など多くのインプットをさせていただきました。Arena の担当の方には US でのスタートアップに対する考え方を教えてもらい、何段階も視座が上がりました。

先輩 CTO とのつながり

AWS 主催の CTO Night & Day では 140 名近くの CTO が参加されていて、多くの方とのつながりが作れました。そこがきっかけでセキュリティに詳しい CTO の方と繋がることができて、プロダクトに関するフィードバックをいただけたり、CTO が学ぶべき経営について教えていただけたりと、かなり成長することができました。

この辺りのブログを読むと当日の盛り上がりが伝わるかなと思います。

公式: https://aws.amazon.com/jp/blogs/startup/cto-night-and-day-2022-nagasaki-day1/

AWSの方: https://note.com/hatahiro515/n/ne34864ab6d24

参加者: https://note.com/dora_e_m/n/n629b04cbcc3f

また、日本CTO協会というコミュニティもあり、そちらでも交流を増やすことができました。

大きい企業のエンジニアの時と比べてどちらが良いキャリアだったのか

あくまで私にとってですが、「安定的に給料がもらえ昇給すること」や「ワークライフバランスの取れた生活」よりも「頑張った分だけリターンが大きくなるしその逆も然り」な創業期のスタートアップの方が向いていました。

昔から自分の取る行動が合理的なのかどうかを考えてしまう癖があり、評価の中で最適化している自分に嫌気が差してしまうこともありました。(例えば、メインのミッションじゃないが重要な仕事をやってもあまり評価されている実感がなく、次のそういった仕事を断った経験など)

一方で、スタートアップに入り何かしらの形で株式を持つことは、事業を大きくすることこそが自分のリターンを最大化することになり、あらゆる仕事に本気で取り組めるようになりました。これが結果として多くの成長に繋がりました。

新卒の時に3ヶ月ぐらいで ScalaAWS を一気に習得したのですが、そのときの倍ぐらいの速度で日々のインプットをできていたのではないかなと思います。

すべての人におすすめできるキャリアではないと思いますが、特に若手で羽を伸ばし切れずにくすぶってる人には〜シリーズAぐらいの初期のスタートアップはとてもおすすめできるキャリアです!

新年の抱負

2022年は走りながらのインプットに終始していたので、2023年は体系的なインプットを頑張ることと、アウトプットを頑張っていこうと思います。アウトプットに関しては、特に登壇などでのコミュニティへの貢献をしていこうと思っています。

インプット

2022年はセキュリティの中でもクラウドの設定ミスやパッケージなどの脆弱性に関わるセキュリティばかりと向き合ってきたので、もう少し広く最新のセキュリティ事情について学んでいこうと思います。

また、会社としても組織について考えを巡らせ構築していく段階となってきました。開発組織や開発生産性などについても改めて勉強をしてみようと思っています。

コミュニティへの貢献

ありがたいことに AWS のコミュニティや CTO のコミュニティにお誘いいただける機会があったので、そういったところで貢献していこうと思っています。

特に、これから頑張っていこうというフェーズのスタートアップの方々に、この1年間で学んだことを還元していきたいです。早い段階から大企業様にも導入いただいていることやそもそもセキュリティ製品であることから、フェーズの割にはかなり自社のセキュリティに力を入れていて知見もかなりあるので、その辺りがまずは還元できるポイントかなと思っております。

あ、ブログも

実は Wordpress からはてなブログに移行しました。理由は前のブログが古いバージョンのまま放置されていて、それをアップデートするのが面倒だったからです。立場上、ブログを乗っ取られると大変なことになるので。。w

前のブログはマークダウンで書くことすらできなかったので、とても良い体験で満足です。お金のなかった開設当時は Wordpress の方がいいなと思ったんですけどね。

頑張って CTO としての日常や技術についてアウトプットしていこうと思います!