こんにちは!LCNEMの宮川 竜太朗です!
今回はLCNEM以外のStable Coinについても研究してみようということでMakerDAOのDAIというStable Coinについて研究していきたいと思います。
Stable Coinとは
まず、Stable Coinはなんぞって人のために簡単に説明します。
Stable Coinとは、仮想通貨のボラティリティが大きすぎて決済に向かないいという問題を解決した通貨のことです。
ドルや日本円などに価値を固定することで安定した通貨を実現しています。
いわば仮想通貨と法定通貨のいいとこ取りをしているということです。
価値の固定の仕方には法定通貨担保型・仮想通貨担保型・無担保型の3つがあります。
これら3つの違いについては、以下の記事がよくまとまっていて参考になるのでぜひ参照してみてください。
MakerDAOの仕組み
今回のMakerDAOのDAIというStable Coinは仮想通貨担保型に当たります。
DAOというだけあってもちろん自律分散型です。
ETHを担保にすることで、ドルに価値を固定したDAIというStable Coinを発行するという仕組みになっています。
たったこれだけのことなのですが、いかんせんボラティリティがありまくりのETHを担保にしているのでStableにする仕組みはとても複雑です。
その仕組みをできるだけわかりやすく説明していきたいと思います。
DAIを手に入れる
まずはCDP(Collateralized Debt Position )と呼ばれるスマートコントラクトにETHをデポジットします。
簡単にいうと、MakerDAOにETH(※PETH)を質入れすることでDAIが発行されます。(むしろ借りるというニュアンスの方が近い)
スマートコンントラクトを使うので中央主体を必要としません。これによってトラストレスにStable Coinを発行することができます。
また、ETHには大きなボラティリティが存在するので150%以上の担保を必要とします。
具体的には、例えば1ETH=1000USDのときに1ETHに対して最大でも666DAIしか発行できません。
さらにこの証拠金維持率の150%を割ってしまうと強制的に清算(後述)されてしまうのでさらに少ない額しか発行すべきではありません。
ロスカットされた場合は、手元に担保のETHが戻ってくることはないので大損してしまいます。
また、このときロスカットをされたCDP作成者は損をしているので、市場には特になんの問題も与えません。
※これが簡単なDAIの基本的な仕組みですが、実際にはも少しややこしい仕組みになっています。
まず、ETHをWETH(Wrapped ETH)に交換する必要があります。これはERC20を扱うために必要な変換で、いつでもETH:WETH=1:1で交換することができます。
そして、MakerDAOで扱っているのはPETH(Pooled ETH)だけです。MakerDAOのシステムでいつでも交換可能なのですが、ETH:PETH≠1:1でありPETHの方が少ない(=価値が高い)ことがPETHを持つインセンティブになっています。(後述)
担保資産を取り出す
作成したCDPはほとんどいつでも閉鎖して担保を取り出すことができます。
MKR(=MakerDAOのガバナンストークン)で手数料を払えば担保のPETH全部またはその一部を取り出せます。
もちろん証拠金維持率が150%を下回ってしまったあとでは担保を取り出すことができません。
証拠金維持率が150%を下回ったら、、
担保にしていたPETHがKeeper(CDPをつくったりDAIで取引を行うMakerDAOの主体のこと)に売り出されます。このとき担保のPETHから発行したDAIと、ロスカットになってしまったことに対する罰則(=Liquidation Penalty)と、価格を安定させるのにかかったコスト(=Stablity fee)を清算した分だけ発行者に戻され、あとはMalerDAOのシステムによってKeeperに売り出されます。
KeeperはDAIによってこのPETHを購入することができます。
このようにするとMakerDAOとロスカットされたCDP作成者の間に資産価値の差が生じます。(MakerDAO > CDP作成者)
この差額分を市場からPETHを購入しburnすることに使います。これによってPETHの価値が高まります。
Stableを実現する仕組み
Stable Coinなので当然価格を安定させる仕組みがあります。
まず、DAIにはTarget Priceというものがあって、これは1DAI=1USDに固定されています。
しかし、市場力学が働くのでこれが常に実現されることはありません。
例えば、DAIの値段が1USDを下回ったとしましょう。
この場合、MakerDAOのシステムによってTarget Priceより高い値段に設定されます。これによってホールドするインセンティブがでてきて(需要増)、逆にCDPを生成するのにコストがかかるようになります(供給減)。
これによってUSDとの乖離を埋めるのです。
DAIがUSDを上回ったときはこれと逆のことが起こります。
Target Priceを低く設定するので、ホールドのインセンティブはなくなり、生成コストが小さくなるので、需要が減り供給が増えます。そのため市場価格は下がることが期待されるのです。
これらのことを繰り返し行うことで常に1DAI≒1USDが実現されているというわけです。
実際には、これを非中央集権の自律分散で行っているので、もっと複雑な仕組みになっています。
詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてみてください。
【MakerDAOとStablecoin】価格安定に寄与するTarget Rate Feedback MechanismとSensitivity Parameterの仕組み
DAIを使うメリット
トラストレス
一つ目はDAIが自律分散でありトラストレスにStable Coinを発行することができるという点です。
Stable CoinといえばTetherのUSDTが有名ですが、担保のUSDが不正に使われていたのではないかと疑念が持たれています。人間にはどうしても欲があるので、中央集権的なシステムにはカウンターパーティリスクがつきものです。
LCNEMでは前払式支払手段をとっているため供託の義務があります。そのためカウンターパーティリスクを心配する必要はありません。ただ、国に供託するので国を使用する必要はありますが、、
しかし、トラストレスな自律分散型のシステムなら特定の中央主体を信用する必要はないので。これらの懸念をすることなく安心して使うことができます。
PETHのホールドのインセンティブ
もう一つは担保にしているPETHの価値が上がる可能性があることです。これは、CDPのロスカットの際にPETHが一定数burnされるからです。これによりPETHの価値が上がるので、PETHを担保にしてDAIを発行するインセンティブになります。
市場価格ではなくMakerDAOのシステム内でPETH→WETHに変換できるのでレートが上がれば市場力学に左右されることなく利益を出すことができます。
ただすでにレートが存在していた場合、そのあとに大量のPETHが発行されかつPETHのburnが起こらないとPETHのレートはどんどん下がっていきます。
また、ETHの大暴落の際に現状のシステムだけで解決できなかった場合は、PETHがさらに発行されて辻褄が合わされるそうです。
これらどちらが起こってもPETHの価値は薄まってしまうので、本当にPETHをホールドがインセンティブになるのかは疑問です。
MakerDAOのデメリット
ややこしすぎる
この記事を一読して理解できた人がどれだけいるでしょうか?
最初、僕が MakerDAOについて調べたときは3週ぐらい同じ記事を読み直しました。
そこから疑問に感じたところをさらに調べて、また読み直す、、という作業を永遠に繰り返していました。
そこまでして、このシステムを理解するぐらいなら他の通貨でいいやとなってしまいます。
実際に買うときの操作もややこしく何をやっているか分からないですからね。
皮肉にもStable ですからPETHを理解するまでは投機目的でも買わないでしょう。
ぱっと見は損しそう?
MakerDAO自体はうまくできたシステムなのですが、ロスカットや担保に150%以上のETHが必要などパッと見た感じ損しそうなビジョンが先に見えてしまうので、それが参入障壁になってしまいそうです。
法定通貨担保型のStable Coinと違って証拠金を150%以上入れないといけないのに、ボラティリティのせいでそれがロスカットされてしまう可能性が十分に高いのです。
それに、ロスカットされなかったとしてもStability FeeといってStableを実現するための手数料を払わないといけません。
ボラティリティが多い仮想通貨の世界でStableの恩恵を受けれるのは嬉しいことですが、わざわざコストやリスクをかけてまで必要なのかという疑問が残ります。
僕個人の意見
正直にいってDAIである必要性があるのかなと思ってしまいました。
これに関しては意見の別れるところだとは思いますが、僕はメリットに対してデメリットが大きすぎるので使おうとは思いません。
ハイリスク・ローリターンだなと、、
そこまでトラストレスが必要なのでしょうか、そこまでしてPETHの利益を得たいのでしょうか。
トラストレスを実現するために無駄な労力をかけてしまうのであれば、中央集権でトラストを実現した方がましなのではないでしょう?(実際に現在のほとんどのサービスがそれで成り立っているので)
ここまで批判的な意見が多くなってしまったのですが、MakerDAO自体はよく考えられた仕組みなので、これを考察してみるのはとても面白かったです。中央主体なしに市場をコントロール仕組みは興味深いものでした。
そして、これらはまだまだ発展途上の技術であるということを忘れてはなりません。
DAOが世界的に業績を残したという情報はまだ知りません。繰り返しますが、これからなのです。
僕があげたデメリットが今後解決しうる可能性は大いにあります。(現状僕にはわかりませんし、わかっていたら作ってるぜって話ですw)
ぜひこの機会にMakerDAOないしDAOの仕組みについて研究してみてください!
この記事を書くに当たって@indiv_1010さんの記事をかなり参考にさせていただきました。
僕の記事よりもさらに詳しく書かれているのでこちらも参考にしてみてください!(その分難しいが、、)